「タフな戸建住宅」

建築を学んでいた学生時代(今から何十年も昔の話ですが)、教授から『これから建築にかかわる人は、「タフな建築」にこだわらなければいけません。』とよく言われていました。「タフな建築」とは、地震等の自然災害に強い躯体を持つことが第一にあげられます。第二に、経年劣化に強い建築である必要があります。築浅で雨漏り等しているようでは「タフな建築」とは言えません。ここまでは学生時代の自分にも理解できました。

第三にあげられたのは、エネルギー効率の良い建築、言い換えれば「自立した建築」でした。最初は意味がよく分かりませんでしたが、当時流行していた最新鋭のインテリジェントビルを見学に行き、「自立した建築」の崇高さに感銘を受けた記憶があります。建物内のエネルギー需給を集中的にコントロールし、災害等により外部からのエネルギー供給が一時的に遮断されても、地下室に大きな非常用発電装置があり、一定期間建物が都市インフラに頼ることなく、自立して機能するように設計されていました。

あれから何十年も経った現代において、建築におけるこれら3つの大きな柱は、大規模商業ビル等ではあたりまえの概念となり、また戸建住宅にも同様の概念が取り入れられつつあります。

「長期優良住宅認定」基準や、品確法に基づく「住宅性能表示制度」基準においては、多くの認定項目があげられていますが、①構造の安全性や耐震性能、②劣化対策(雨漏り等対策)、と並んで③温熱環境(省エネルギー対策)が認定基準の柱として位置づけられています。

「建物状況調査」は、上記「長期優良住宅認定」や「住宅性能表示制度」とは目的を異にしていますが、その内容は①建物構造上の検査、②雨漏り等劣化事象の検査、の2つが大きな調査項目となっています。

今後、住宅価値を長期にわたって維持するためには、調査項目として③温熱環境(省エネルギー性能)を追加し、相応の対応をしていく必要があるでしょう。例えば、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)は、省エネルギーと創エネルギーを同時に行い、建物内温熱環境を最適に保つハイスペックな戸建住宅です。

これら3つの柱が備わった『タフな戸建住宅』が新築住宅市場のみならず、リノベーション後の中古住宅市場を席捲するようになれば、専門家の立場でこれらの的確な建物状況調査を行い、住宅価額査定に反映させる必要があることは言うまでもありません。

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