不動産と負動産

不動産は所有しているだけで、固定資産税や維持管理費等の費用がかかります。有効に活用しないと、資産ではなく、負債(=負動産)になってしまいます。

遺産分割調停に委員としてかかわっていますが、ここでも不動産の分割方法でもめるケースが頻繁にあります。不動産を資産として取得したいと考える当事者は、①居宅として永年住んできた等で愛着もあり手放したくないという住居としての所有意思がある場合、②収益を生み出す収益物件の場合、③売ればそこそこの価額ですぐに現金化できる不動産の場合、の3パターンであり、逆にこれ以外の不動産は、関係当事者がそっぽを向く「負動産」である場合がほとんどです。

今後も少子高齢化、人口減少が進む社会的要因を背景として、不動産は二極化傾向を強めていくでしょう。例えば、収益物件で言えば、新耐震基準で建てられた駅近バリアフリー物件と、旧耐震(補強工事未施工)の駅から徒歩20分超の物件では、実需の違いから前者は不動産、後者は「負動産」となるでしょう。

バブル期、不動産神話全盛期においては、後者も不動産でした。社会環境が変化し、不動産に対する人々のかかわり方が変われば「負動産」に変わってしまいます。(築古になったからということだけが原因ではありません。)近々の事案で言えば、インバウンド需要を見込んで民泊用の物件を購入して収益を見込んでいた人も、まさか新型コロナの影響でここまでインバウンド需要が冷え込むとは想像していなかったでしょう。反対に、新型コロナの影響でEC取引が盛んになり、物流施設に対する需要が高まって良質不動産となっている現状もあります。

不動産は長期の投資物件です。長期的には社会環境の変化や想像もしないリスクが潜んでいます。「長期的展望にたった不動産投資を」とよく言いますが、将来どんなリスクが待ち受けているのかは誰にもわかりません。

但し、今必要な不動産スペックを冷静に分析することはできます。少子高齢化、人口減少は今後も続いていくことは間違いありませんし、現時点での物理的な不具合を見つけ、対策しておくことは可能です。

まずは、今の対象物件の状況分析(物理的な建物状況調査や不動産マーケット分析)をしっかり行った上で、意思決定することをお勧めします。

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