混合構造の鑑定評価・一考察

異種部材を連結して一つの構造体にしたものを混合構造と言います。例えば10階建事務所ビルのうち、1階~3階までがSRC造、4階~10階までがS造で建てられた建物です。

このような建物の鑑定評価(積算価額)を行う場合、再調達原価(今建築するとしたらいくらで建つか)の把握は、SRC造部分とS造部分に分けて行い、減価修正(評価時点までにどの程度価値が下がっているか)も同様に分けて行うのが理論的だと考えます。SRC造とS造とでは建築単価が異なるし、経済的耐用年数も異なるからです。

一方で、外部仕上げや建築設備のように、その建物部位単体で修繕や取替が可能であれば各々の再調達原価と減価修正を実施し、各建物部位の総額が建物価額とすれば理論上は問題ないのですが、躯体をSRC造とS造に分けて分析評価することに意義があるのでしょうか?躯体はその部位全体で運命を一にし、分割して取替、修繕が行えるものではないからです。(将来的には技術の進歩で可能になるかもしれませんが。)

なぜ、このような混合構造で建築するのかは様々な理由があると思いますが、一番の理由は建築コストの削減です。低層階は構造耐力のあるSRC造でコストをかけ、上層階はそれ以外の構造でコストを下げるのです。外観上は略見分けはつきません。

この点から考察すると、鑑定評価上は過半の占める構造種別で評価するのが合理的と言えるでしょうか。

因みに、課税においては、今は構造種別ごとに分けて減点補正率を査定している自治体もあるようですが、「低層階方式」として、上記の例の場合、堅固なSRC造で一棟建物全体を評価している自治体もあるようです。建物は土地と有機的に結合してその効用を発揮します。土地と基礎によって緊結されている低層階の構造種別によって統一的に判断するのも一定の説得力はあると思います。

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